福田内閣、政府の記録管理の不備を認める − 文書管理の法制度の在り方を検討 − 2007年11月20日 |
福田内閣は11月20日、近藤昭一衆議院議員が提出した政府の記録管理に関する質問主意書に対して、年金記録の紛失など一連の政府記録の管理で「国民の信頼を損ねたことは遺憾」とする答弁書をまとめた。 近藤議員は年金記録の紛失や自衛艦航泊日誌の廃棄、C型肝炎感染者リストの放置など政府の記録管理には目に余るものがあるとし、政府の記録管理のあり方を抜本的に見直すべきだとして、7項目にわたって質問した。 答弁書は「公文書等の管理の一層の充実のための法制度の在り方」を検討していくとし、法整備に踏み込むことを明らかにした。また、歴史資料の保存については諸外国の公文書館を踏まえて体制を充実するとし、大戦までに作成された行政文書は公文書館への移管を進め、アジア歴史資料センター等を通じて資料提供していきたいとしている。 以下は質問主意書の質問と答弁を一問一答形式にした。 ■政府の記録管理に関する質問主意書(2007年11月12日提出) 年金記録の紛失や自衛艦航泊日誌の廃棄、C型肝炎感染者リストの放置が明らかになるなど政府の記録管理には目に余るものがある。行政記録は行政省庁が法律に基づいて間違いなく仕事を進めていることを国民に説明する重要な役割を持っている。政府が作成する行政記録は国民の共有財産であり、行政省庁が恣意的に処分していいものではない。国民に説明責任を果たすために、政府の記録管理は記録の作成から保管、公開、廃棄、移管、保存、利用に到る文書サイクルが一元管理されていなくてはならないと考える。 福田内閣は、記録管理についていかなる認識をもっているか以下質問する。 《質問》 一、福田総理は一連の記録管理に係わる不祥事に対してどのように認識しているか。 《答弁》 一について お尋ねについては、政府として、行政に対する国民の信頼を損ねたことは遺憾であると認識している。なお、行政機関が保有する行政文書の管理については、行政を適切に遂行するとともに、情報公開を通じて国民に対する説明責任を果たすという観点から、より一層適切に実施していくことが必要であると考えている。 《質問》 二、福田総理は二○○五年に「公文書館制度強化推進議員連盟」を発足させ、「恣意的に行っている資料の管理や保存をきちんと法律で決めて義務化する」(毎日新聞 五月二十二日付)としていたが、これを内閣の方針とする考えはあるか。 考えがあるとすればどのように進めるのか明らかにされたい。 三、米国では連邦記録法に基づいて国立公文書館記録管理庁が連邦各省庁の組織、政策、活動の記録管理を監督、支援する役割を担っている。日本の場合、国立公文書館はあっても独立した記録管理庁というものはない。福田内閣は行政省 庁の記録管理を指導監督する法律と独立した組織を設置する必要性についてどのように認識しているのか明らかにされたい。 四、小泉内閣は二○○五年の施政方針演説で、「政府の活動の記録や歴史の事実を後世に伝えるため、公文書館における適切な保存や利用のための体制整備を図ります」との方針を明らかにしている。福田内閣はこの方針を踏襲する考えはあるか明らかにされたい。考えがあるとすれば、具体的にどのように進めるのかも明らかにされたい。 五、福田総理は先の参議院予算委員会(二○○七年十月十六日)での質問に答えて、他国に比べて日本の国立公文書館は「誠にお粗末というか、わびしい状態である」と答弁している。福田内閣は日本の国立公文書館のあり方と充実させる方策をどのように考えているのか明らかにされたい。 六、国立公文書館は二○○五年に国際水準を念頭に置いた中期目標を設定し、○六年には半現用文書の中間書庫での集中管理や電子記録の管理のあり方などを検討している。政府記録の紛失が明らかになった今日、記録が分散、散逸しないよう、半現用文書は早急に中間書庫で管理を行う必要があると考えるがどのように対応するのか明らかにされたい。 《答弁》 二から六までについて 政府の活動の記録や歴史の事実を後世に伝えることは、現在及び将来の国民に対する説明責任を果たす観点から極めて重要であると認識している。 政府としては、文書管理に関する制度が一層適切に運用されるよう努めることはもとより、行政文書や歴史資料として重要な公文書等の管理の一層の充実のための法制度の在り方も含め、今後の文書管理等の在り方について検討してまいりたい。また、今後、各府省庁の文書管理について、現状を評価するとともに、公文書等の現用段階から将来、独立行政法人国立公文書館(以下「公文書館」という。)に移管することがふさわしいものを評価・選別する仕組みとしての「中間書庫システム」の試行等を進めていくこととしている。 さらに、公文書館については、体制等を充実することが必要であると認識しており、諸外国の国立公文書館の実情に関する調査等も踏まえ、その方策についても検討してまいりたい。 《質問》 七、福田総理は先の衆議院本会議(二○○七年十月三日)での質問に答えて、「歴史資料などにつきましては、今後、その収集、保存に力を入れていかなければいけない」と答弁している。防衛省は戦争指導の観点から各国に保存されている大戦時の資料を収集しているが、各省庁が保存している大戦時の多くの資料は公開されずに眠ったままになっている。既に大戦時から六十年以上経過している今日、各省庁が保存している戦時中の資料を調査し、国立公文書館等に移管を促進し、アジア歴史資料センターで公開することが望ましいと考えるがどのように対応するのか明らかにされたい。 《答弁》 七について お尋ねの戦時中の歴史資料として重要な公文書等については、先の大戦が終了した昭和二十年までに作成又は取得し、各府省庁が保有している行政文書を、保存期間満了時に、公文書館等へ移管することとしており、今後とも、その移管を進めてまいりたい。 また、公文書館等で保存している戦前・戦中のアジア歴史資料については、アジア歴史資料センター等において、インターネットを通じ、順次提供してきており、今後ともその充実に努めてまいりたい。 |