政府、公文書管理法案を閣議決定、国会に提出

公文書の取り扱いを法制化することを目的とした公文書管理法案を政府は3月3日に閣議決定し、国会に提出した。 政府は2月中に与党側へ法案の説明を終え、民主党は法案への対応を協議するため3日の閣議決定を待って担当室からヒアリングを行った。 一方、情報公開法の制定や改善を求めてきた市民団体は3日、政府の公文書管理法案について公文書が公共財であり、市民の共有財産であるとの記述がなく、法案は「政府のための公文書管理法」になっていると指摘、「市民のための公文書管理法」を制定するべく、「市民のための公文書管理法の制定を求めるネットワーク」を設立するとした趣意書案を発表、3月17日に政府案を検証するため国会内でフォーラムを開催した。

 

市民のための公文書管理法の制定を求めるネットワーク設立趣意書  

私たちは、市民の知る権利を確保し、国の機関や地方公共団体等の透明性を実現するためには、情報公開法が機能する上での前提となる公文書管理法の制定が必要不可欠であると考えています。このように公文書管理法は、国等から市民への説明責任を保障し、情報公開を実質的に促進することから、民主主義の基盤となるものです。  年金記録の紛失やC型肝炎感染被害者リストの放置、海上自衛艦航泊日誌の廃棄など公文書の杜撰な管理実態を踏まえ、政府は公文書管理法案を3月3日に閣議決定し、国会に提出しました。 私たちは政府が公文書管理法案を提出するに至ったことを歓迎するものの、提出法案に公文書が公共財であり、市民の共有財産であるとの記述がなく、「公文書管理の在り方等に関する有識者会議」(座長・尾崎護元大蔵事務次官)における当初の方針から大きく後退したと指摘せざるを得ません。 私たちは「政府のための公文書管理法」ではなく、「市民のための公文書管理法」を制定するべく、多くの市民の参加により、提案書をまとめ、全国会議員と各政党に理解を求めるため「市民のための公文書管理法の制定を求めるネットワーク」を設立するものです。                      

2009年3月17日

川村一之(戦争被害調査会法を実現する市民会議事務局長)/小林幸治(市民がつくる政策調査会事務局長)/瀬畑 源(歴史研究者)/西村啓聡(弁護士・日弁連情報問題対策委員会幹事)/伴英幸(原子力資料情報室共同代表)/檜皮瑞樹(早稲田大学大学史資料センター助手)/まさのあつこ(ジャーナリスト)/三木由希子(情報公開クリアリングハウス理事)/吉田裕 (一橋大学教授/日本の戦争責任資料センター編集長)*50音順:3月17日現在

 

資料  公文書等の管理に関する法律(抜粋) 3月3日 閣議決定

(目的)第一条 この法律は、国民主権の理念にのっとり、公文書等の管理に関する基本的事項を定めること等により、行政文書等の適正な管理、歴史公文書等の適切な保存及び利用等を図り、もって行政が適正かつ効率的に運営されるようにするとともに、国及び独立行政法人等の有するその諸活動を現在及び将来の国民に説明する責務が全うされるようにすることを目的とする。

法律案の前文は下記のHP参照

「公文書等の管理に関する法律案」内閣府の掲載HPアドレスhttp://www.cao.go.jp/houan/171/index.html

衆議院提出回次:第171回議案種類:閣法 41号議案名:公文書等の管理に関する法律案http://www.shugiin.go.jp/index.nsf/html/index_gian.htm

 

茨城・神栖市のヒ素汚染問題のその後 (3月17日) 川村一之

 茨城県神栖市の井戸水が有機ヒ素化合物で汚染され、井戸水を飲料していた住民に健康被害が出ていることが発覚したのは2003年3月。有機ヒ素化合物は旧日本軍由来の毒ガス成分であるジフェニルアルシン酸(DPAA)とわかった。環境省が現場周辺を調査した結果、05年1月に井戸近くの地中から有機ヒ素が含まれたコンクリート塊を発見した。コンクリート塊は誰かによって不法投棄されたとみなされた。

 被害を受けた住民は05年8月、コンクリート塊の投棄を指示した人物を容疑者不詳のまま殺人未遂容疑で告訴し、06年7月には国と県の責任などを問うため、国の公害等調整委員会に責任裁定を申請した。

 環境省は被害を受けた住民を対象に医療費等を給付する緊急措置事業を03年6月から3年をめどに実施したが、06年6月に3年延長、08年5月に更に3年間継続した。医療費給付を受けている被害者は154人にのぼっている。

 また環境省は原因とされたコンクリート塊を05年7月に撤去、調査によって掘り出した土壌等も密閉容器に詰めて焼却処理を行っている。その総処理量は汚染土壌2033トン、コンクリート様の塊および粗大物115トン、汚染米14トンで合計2162トンとなった。しかし地下水汚染はなくならず、現在も高濃度の有機ヒ素が検出されていることから、地下水を浄化するためのプラント(有機ヒ素化合物の約90%を除去)が建設され、4月から稼動する準備が進められている。処理期間は2年間を予定。同施設は神栖市民を対象として3月28日に施設見学会が行われる。

 住民側は公害等調整委員会で国による有機ヒ素化合物の製造責任があると主張、国側は旧軍が民間企業にDPAAの製造を委託し、毒ガスの「あか剤」を製造したことを認めているものの、DPAAは連合国軍に接収され、その後、日本政府に返還され、民間に払い下げられた可能性があるとして責任と賠償義務がないと双方の主張は平行線をたどっている。

 被害者代表の池田三富郎さん (63) は 「被害が出てから丸6年。 長すぎるのではないか」 と述べ、 「裁定に出て来られないほど苦しんでいる人が大勢いる」 と窮状を訴え、 「裁定が1日も早く出される日を待っている」 と語っている。

★地下水処理施設見学会の開催について(お知らせ)http://www.env.go.jp/press/press.php?serial=10914

福岡市議会が「慰安婦」問題の意見書を可決(3月25日)

 福岡市議会は3月25日、日本軍「慰安婦」問題に対して政府に誠実な対応を求める意見書を賛成多数で可決した。意見書案はふくおかネットワークと社民党、民主党、共産党の共同で提出され、公明党が賛成して可決された。自民党は反対した。地方自治体の議会では宝塚市と清瀬市、札幌市が同様の意見書を提出しており、福岡市議会は4番目。 

以下、福岡市議会の意見書

日本軍「慰安婦」問題に対する国の誠実な対応を求める意見書

 かつての戦争において,日本が近隣諸国の人々に多大な被害を与えてから,既に64年経ちますが,いまだに人々の戦争被害の傷は癒されていません。そして直接の被害者のみならず,その子孫も親世代が傷つき癒されていないことで傷ついています。日本軍「慰安婦」問題は,その象徴的な被害です。

 2007年にはアメリカ,オランダ,カナダ,EUなどの議会において,日本政府に対し,「慰安婦」問題の責任を認め,公的に謝罪することなどを求める決議が採択されています。2008年には,フィリピン議会の下院外交委員会並びに韓国及び台湾の議会でも採択され,国連などの国際的な人権擁護機関からも早期解決を求める勧告が出されています。国際社会は「慰安婦」問題を現在に通じる重大な人権侵害と認識し,日本政府が誠実に対応することを要請しています。

 「慰安婦」問題に誠実に対応することは,戦争を遂行するために女性の性が利用されるという人権侵害が,二度とないようにするという日本政府の世界への意思表示となります。そして,アジアの人々の戦争被害の傷を癒し,和解して平和的に共存していく道筋をつくることになります。

 被害者の訃報が相次ぐ中,被害者の存命中に納得できる解決が急がれます。 よって,福岡市議会は,国会及び政府が,1993年の河野内閣官房長官談話に基づき,次の事項について誠実な対応をされるよう強く要請します。

1 被害者出席のもと,国会で公聴会を開くこと。
2 「慰安婦」問題の責任を認めて,政府は公的に謝罪すること。
3 「慰安婦」問題の解決のため,政府は被害者の名誉回復を図ること。

以上,地方自治法第99条の規定により意見書を提出します。

2009年3月25日                      

衆議院議長,参議院議長,内閣総理大臣,法務大臣,外務大臣,文部科学大臣あて

福岡市議会議長 川口 浩