地方議会が「慰安婦」問題の解決求める意見書・決議を採択
■韓国の大邱市議会、日本軍「慰安婦」決議を採択(2009年7月24日)
韓国の大邱(テグ)市議会は7月24日、日本軍「慰安婦」問題解決を求める決議を採択した。すでに韓国国会が決議を採択しているが、日本の各地の議会で意見書が可決されていることから、韓国の地方議会で決議を採択する動きが広がっている。
韓国で元「慰安婦」の被害女性を支援している挺身隊問題対策協議会は、初めて韓国の市議会で決議が行われたことについて、「日本政府に真相究明と公式謝罪、法的賠償などを求め、韓国政府に向けても対日外交協商と被害者の名誉回復のため、積極的な努力を求めている今回の決議を歓迎する。」との声明を発表した。
大邱市議会の決議は以下のとおり
日本軍慰安婦問題解決を求める大邱市議会決議
主文
大邱市議会は、第2次大戦を前後した日本帝国主義軍隊によってほしいままにされた反人権的な日本軍「慰安婦」(日本軍性奴隷制)について、この間国連人権委員会・国際労働機構・アムネスティインターナショナル・米下院などから数次にわたり日本政府に勧告が出されたが、日本政府はこれに公式的な謝罪はもちろん、一切の責任ある姿勢をとっていないことに対し、深刻な憂慮の意を表し、日韓間の過去問題の正しい解決は、今後両国間の友好協力にも一助になるだろうと信じ、次のように決議する。
1.1.大邱市議会は、日本軍慰安婦被害者の名誉回復のため、過去に日本帝国主義によってほしいままにされた日本軍慰安婦に対する日本国国会および政府の公式認定と公式謝罪を求める。
2.2.大邱市議会は、日本軍慰安婦被害者に関する真相究明のための日本国の公式機構設置および、これを通じ日本帝国主義軍隊によってほしいままにされた反人権的・反人類的な日本軍慰安婦に対する徹底した真実究明を求める。
3.3.大邱市議会は、日本軍「慰安婦」問題の日本国の真実究明を通じ、過去を反省して犯罪に対する真相を歴史教科賞に記録し、恥ずかしい歴史を繰り返さないことを求め、法制定を通じ被害者が受け入れられる法的賠償を求める。
4.4.大邱市議会は、韓国政府が日本軍慰安婦問題解決のための請求権協商など、対日外交協商を積極的に履行することと、日本軍「慰安婦」の名誉と人権を回復することに、最善を尽くすことを求める。
■京都・京田辺市議会が「慰安婦」問題意見書を全会一致で可決(2009年6月29日)
京都府の京田辺市議会は6月29日、「慰安婦」問題意見書を全会一致で可決した。全会一致は兵庫県の宝塚市議会に続いて2番目。これで意見書可決は全国で8市議会となった。
可決された意見書は以下のとおり。
日本軍「慰安婦」問題について日本政府へ早期解決を求めるための意見書
戦後64年たった今も、日本軍「慰安婦」問題について、被害女性からの謝罪と補償を求める訴えが続けられている。人間としての名誉と尊厳を著しく傷つけられた被害者の思いは筆舌に尽くしがたいものがある。
2007年7月にはアメリカ下院において「日本軍が女性を強制的に性奴隷にした」ことを公式に認め、謝罪するよう日本政府に求める決議が採択された。
その後、カナダ、オランダ、EU議会でも採択され、2008年には、フィリピン、台湾、韓国でもあいついで同様の決議が採択された。さらに国連やILOなどの国際的な人権擁護機構からも繰り返し勧告や指摘がされている。
被害女性たちは、今、80歳、90歳の高齢になっており、一日も早い解決が求められている。政府は、1993年の河野洋平官房長官(当時)の「お詫びと反省の気持ちを中し上げる。」という「談話」を誠実に踏襲し、日本軍「慰安婦」問題被害者の公式謝罪と補償を求める声に耳を傾け、早急に問題の解決を図るよう求めるものである。
以上、地方自治法第99条の規定により、意見書を提出する。
平成21年6月29日 京田辺市議会議長 上田 登
【提出先】衆議院議長、参議院議長、内閣総理大臣
■東京・小金井市議会も「慰安婦」問題意見書を可決(6月24日)
東京・小金井市議会は24日、第3回定例会最終日の本会議で、日本軍「慰安婦」問題に対する国の誠実な対応を求める意見書を賛成13、反対9の賛成多数で可決した。
意見書は国会での公聴会開催、政府の公的謝罪、被害者の名誉回復を求めている。会派「みどり・市民ネット」、共産、民主・社民クラブの三会派が提出、自民、公明は反対した。
同様の意見書は国内で7番目、6月定例会では大阪・箕面、東京・三鷹の両市議会に続いて3番目。また、京都・京田辺市議会は29日に意見書を可決する見込みとなった。
可決した意見書は以下のとおり
日本軍「慰安婦」問題に対する国の誠実な対応を求める意見書
かつての戦争において日本が近隣諸国の人々に多大な被害を与えてから、すでに64年が経つが、いまだに人々の戦争被害の傷は癒されていない。そして直接の被害者のみならず、その子孫も親世代が傷つき癒されていないことで傷ついている。日本軍「慰安婦」問題はその象徴的な被害である。 2007年にはアメリカ、オランダ、カナダ、EUなどの議会において、日本政府に対し、「慰安婦」問題の責任を認め、公的に謝罪することなどを求める決議が採択された。2008年には、フィリピン議会の下院外交委員会並びに韓国及び台湾の議会でも採択され、国連などの国際的な人権擁護機関からも早期解決を求める勧告が出されている。国際社会は「慰安婦」問題を現在に通じる重大な人権侵害と認識し、日本政府が誠実に対応することを要請している。 「慰安婦」問題に誠実に対応することは、戦争を遂行するために女性の性が利用されるという人権侵害が二度とないようにするという日本政府の世界への意思表示となる。そして、アジアの人々の戦争被害の傷を癒し、和解して平和的に共存していく道筋をつくることになる。 被害者の訃報が相次ぐ中、被害者の存命中に納得できる解決が急がれる。 よって、小金井市議会は、国会及び政府が1993年の河野内閣官房長官談話に基づき、次の事項について誠実な対応をするよう強く要請する。
1 被害者出席のもと、国会で公聴会を開くこと 2
「慰安婦」問題の責任を認めて、政府は公的に謝罪すること 3 「慰安婦」問題の解決のため、政府は被害者の名誉回復を図ること
以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。
平成21年6月24日 小金井市議会議長 宮崎晴光
衆議院議長 /
参議院議長 / 内閣総理大臣 / 法務大臣 / 外務大臣 / 文部科学大臣 あて
■東京・三鷹市議会が「慰安婦」問題意見書を採択(2009年6月23日)
日本軍「慰安婦」問題で6月23日、箕面市に続き、東京都三鷹市議会が意見書を公明、民主、共産、会派「にじ色のつばさ」の賛成17、反対10の賛成多数で可決した。意見書は「慰安婦」問題の真相究明と政府の公的謝罪、歴史教育の三点を求めている。同様の意見書は国内では6番目となる。
以下、三鷹市議会の意見書
日本軍「慰安婦」問題に関する意見書
かつての戦争において、日本が近隣諸国の人々に多大な被害を与えてから既に64年がたつが、人々の戦争被害の傷はいやされていない。日本軍「慰安婦」問題はその象徴的なものといえる。
アジア各地で被害にあった元日本軍「慰安婦」の方々の多くは既に80歳を超え、被害者の訃報が相次いでいる昨今である。日本政府は1993年に河野内閣官房長官談話を発表し、「当時の軍の関与の下に、多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題である」とおわびと反省の気持ちをあらわした。
この談話に対し、被害者の女性たちからはさらに日本政府が「公的に責任を認め、公的に謝罪しなければ、自分たちの真の名誉と尊厳の回復にはつながらない」との声が相次いだ。 また、国際社会から2007年には、アメリカ、オランダ、カナダ、EUなどの議会において、また、2008年にはフィリピン、韓国、台湾などでそれぞれ日本政府に対し、「慰安婦」問題の責任を認め、公的に謝罪することなどを求める決議が採択された。
被害者の女性たちの真の願いは、戦争を遂行するために女性の性が侵害されることが二度と起こらないように、また、未来の多くの女性たちのためにも過去に行ったことには公的なけじめをつけてほしいというものである。 1993年の河野談話は、第一次、第二次調査を経て、「われわれは、このような歴史の真実を回避することなく、むしろ教訓として直視し、歴史研究、歴史教育を通じ永く記憶にとどめ、同じ過ちを決して繰り返さないという固い決意を表明し、今後とも民間の研究を含め十分に関心をはらっていきたい」旨の発表がなされている。
今、この精神を維持・発展させて、内容を具体化することこそがアジアの人々の戦争被害の傷をいやし、和解して、平和的に共存していく道筋をつくることにつながることと確信する。 被害者の存命中に名誉につながる納得できる解決が急がれる。 よって、本議会は、政府に対し、下記の項目について、国の誠実な対応を強く求めるものである。 記
1 被害者の声に耳を傾け、真相究明を行うこと。2 「慰安婦」問題の責任を認めて、政府は公的に謝罪すること。3 過ちを繰り返さないために、学校などで歴史教育を通じて次世代に事実を伝えること。
上記、地方自治法第99条の規定により、意見書を提出する。
平成21年6月23日 三鷹市議会議長 田中順子
■大阪・箕面市議会が「慰安婦」問題の意見書を可決(2009年6月22日)
大阪府の箕面市議会は22日午後、「慰安婦」問題に対する国の誠実な対応を求める意見書を賛成17、反対7の賛成多数で可決した。提出者は民主党、共産党、市民派ネット、公明党の4会派。同様の意見書を採択したのは宝塚、清瀬、札幌、福岡に続いて国内では5番目となる。
採択された意見書は以下のとおり
議員提出議案第十三号
「慰安婦」間題に対する国の誠実な対応を求める意見書
かつての戦争において、日本が近隣諸国の人々に多大な被害を与えてから、六十四年が経過する。しかし、いまだに戦争被害の傷は癒されていない。
平成十九年(二〇〇七年)七月にはアメリカ下院議会が、「日本軍が女性を強制的に性奴隷にしたことを公式に認め、謝罪するよう日本政府に求める決議」を採択している。そして、アメリカの議会決議に続いて、オランダ、カナダ、EU議会などでも同種の決議が採択され、国連などの国際的な人権擁護機関からも早期解決を求める勧告が出されている。 日本政府としては、平成五年(一九九三年)八月に、当時の河野洋平官房長官が、「お詫びと反省の気持ちを申し上げる。そのような気持ちを我が国としてどのように表すかについては、今後とも真剣に検討すべきもの」という談話を発表しているが、何ら進展していない。 よって、政府においては、河野談話に矛盾しないよう「慰安婦」問題の真相究明を行い、被害者の尊厳回復に努め、誠実な対応をされるよう要望する。
以上、地方自治法第九十九条の規定により意見書を提出する。
平成二十一年六月二十二日 箕面市議会
〜 第一条に「公文書は国民共有の知的資源」と明記 〜
政府が提出していた公文書管理法案は衆議院の修正を経て、6月24日の参議院本会議で全会一致可決、成立した。公文書管理法は7月1日に公布され、政令などを整備し、2011年4月に施行される。政府案の修正の主な点は、第一条の目的に「公文書等が、健全な民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源として、主権者である国民が主体的に利用し得るものである」との文言を挿入したことや、文書の廃棄に総理大臣の合意を必要とするなど各府省の恣意的な処分に一定の歯止めをかけたことなどがあげられる。しかし公文書管理の在り方を検討していた有識者会議が提言していた公文書管理担当機関の設置や公文書を集中管理する中間書庫、国立公文書館の「特別な法人」への格上げなどは検討課題として持ち越しになった。衆議院は15項目、参議院では21項目の附帯決議も採択された。
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■公文書管理法成立、施行は2011年4月(6月24日)参院本会議
〜今後は施行前の公文書管理規則とレコードスケジュールの作成に焦点〜
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政府が3月3日に提出した公文書管理法案は6月24日午前、参議院本会議で衆議院の与野党共同修正を受け入れ、全会一致で可決成立した。
これからは政令を整備し、2011年4月から施行される見込みだ。
公文書管理制度の法制化は、米国が1950年に連邦記録法を制定したことから考えると60年も遅れているが、日本の記録管理にとっては大きな前進となる。
ばらばらであった行政府の文書管理が統一ルールによって管理され、作成から廃棄・保存まで一元化されるメリットは大きい。保存期間が過ぎた文書が国立公文書館に移管されない現実も解消されることを期待したい。
しかし課題も多い。法案審議の中で衆議院で15項目、参議院で21項目の附帯決議が行われたことにそれは象徴されている。
今回は行政文書に限られているため、立法府や司法府を含めた国の機関全体の公文書管理法制になっていない。
また行政文書の管理においても、米国の国立公文書館記録管理院のように、行政府から独立した機関が行政文書のライフサイクルを統括するシステムも見送られている。米国と違って、文書の不法な取扱いに罰則もない。
これらは今後の課題だ。
公文書管理法が成立し、今後は法施行までに政令の整備が行われることになる。条文を見ればわかることだが、政令に委ねている項目が多いことに気づく。
これ等、政令の立案などに当たっても法案の立案過程で取られた有識者会議の議論の公開などと同様に、新たに新設される公文書管理委員会での議論をオープンにして一般市民の意見を反映させる方策をとるべきである。
行政文書を国民の共有財産(法律では知的資源)にできるかどうかは、今後に作られる公文書管理規則とレコードスケジュールに負うところが大きいからである。「仏作って魂入れず」では困るのである。
2009年6月24日 (川村一之 記)