2008年 市民会議ニュース


市民会議ニュース 2008.3.10 NO.132
第169回通常国会  今年は世界人権宣言がテーマ

3月18日 辛淑玉さんを講師に公開ヒアリング

「日本社会」の人権感覚は


■世界人権宣言60周年で公開ヒアリング

世界人権宣言が国連総会で採択されて今年で60年を迎えます。国連は60周年を記念して“Dignity and justice for all of us” (わたしたち全員のための尊厳と正義)を合言葉に世界人権宣言の理解を広める活動を展開しています。
恒久平和議員連盟は戦争の惨禍の実態を明らかにすることを目的に国立国会図書館に恒久平和調査局を設ける法律案を発議し、衆議院に提出して来ましたが、今年は世界人権宣言を世界の共通基準として「人類の正義と平等」をどのように実現するのかという観点から公開ヒアリングを実施することにしました。

■朝鮮半島出身者の遺骨返還を実現

東京・目黒区の祐天寺に保管されていた旧軍人軍属の遺骨101人分が1月23日、韓国の遺族の手元に返還されました。また、北海道の室蘭市で米軍の艦砲射撃の犠牲になった3人と赤平の炭鉱で死亡した1人の計4人の遺骨も市民団体の活動が実り、2月28日、韓国の国立墓地(望郷の丘)に納骨されました。
67万人とも言われる強制徴用者のうち日本で死亡した方の遺骨返還が一歩前進することができました。

国立国会図書館に「恒久平和調査局」の設置を要望 2008年1月18日
第169回通常国会が召集された1月18日午前、市民会議は衆参両院の全国会議員に戦時中の歴史資料を調査し、かつての戦禍の実態を明らかにする「恒久平和調査局」を国立国会図書館に設置するよう要請しました。
要請は福田首相が昨年末に北京大学で講演した過去を反省する勇気と知恵で、歴史事実の究明をするための国立国会図書館法改正案の早期成立を求める内容。要請文は以下の通り。

【要請文】

国会議員のみなさまへ        2008年1月18日

国立国会図書館に「恒久平和調査局」の設置を要望します!

◆過去を「反省する勇気と知恵」で歴史事実の究明を

第169回国会の開会にあたって、衆参両院の国会議員の皆さまに訴えます。
昨年の12月27日から訪中された福田首相は、28日の午前、北京の人民大会堂で中国の温家宝首相と会談しました。両首脳は、日中平和友好条約締結30周年にあたる2008年を「日中関係飛躍元年」と位置づけ、関係強化を進めることを確認しました。
その日の午後、首相は北京大学で講演を行い、次のように訴え、学生に強い感銘を与えました。
「長い歴史の中で、不幸な時期があっても、しっかりと直視して、子孫に伝えていくことがわれわれの責務だ。自らの過ちに対する反省と、被害者の気持ちを慮(おもんばか)る謙虚さを伴ったものでなくてはならない。過去をきちんと見据え、反省すべき点は反省する勇気と知恵があって、はじめて将来に誤り無きを期すことが可能になる」、と。
福田首相は、日本の国会においても、歴史の事実の究明に関心を持ち、公文書館の充実の必要性を訴え、強調しています。北京大学の学生も、福田首相が「過去の過ちについても率直に認めてくれた」と感慨深く、感想を述べています。

◆戦争の惨禍の実態を公的な機関で調査してください

現在、日本の国会では超党派の議員の皆さんが議員連盟によって、国立国会図書館に恒久平和調査局の設置をめざして努力されています。同法案の目的は、次の通りです。
「この法律は、今次の大戦及びこれに先立つ一定の時期における惨禍の実態を明らかにすることにより、その実態について我が国民の理解を深め、これを次代に伝えるとともに、アジア地域の諸国民をはじめとする世界の諸国民と我が国民との信頼関係の醸成を図り、もって我が国の国際社会における名誉ある地位の保持及び恒久平和の実現に資することを目的とする」。
実は上記の法案の趣旨は、福田首相の北京大学の講演で述べられた趣旨と同様です。したがって超党派の精神を発揮され、ベストを尽くして所期の目的を達成するために努力されることが強く望まれます。もちろん、福田首相自身、若い学生に訴えられた重要な視点、すなわち「過去をきちんと見据え、反省すべき点は反省する勇気と知恵」をもって将来に誤りのない努力を払うことが強く求められていることを率直に認めることが必要でしょう。

◆国会図書館に「恒久平和調査局」の設置を要望します

今こそ、所期の目的を達成するために、院の内外の結集が必要でありましょう。真の意味で、超党派の原則が確保され、各党の党議や派閥中心ではなく、歴史の事実に基づく歴史の認識の共有・共通の認識をめざす冷静さと決断とが不可避の課題ではないでしょうか。
終わりに、もう一度確認したいと思います。
福田首相が北京大学で、講演の題名も「共に未来をつくろう」とし、日中関係への思いを若い世代に話し、多大の感銘を与えたことは、中国全国に生中継し、大きい影響を与えたことは周知の事実になっています。以上のことは、中国に限ったことではありません。
ともあれ、福田首相は現在、日本の最高責任者であり、北京大学での歴史的発言を日本国内でも十分に責任をもって実行に移されることを期待するものです。そして、国会議員の皆様が、日本が関与した戦争の惨禍の実態を公的に調査し、国立国会図書館に恒久平和調査局の設置することによって世々に歴史の事実を伝えてゆくためによきリーダーシップを発揮されることを強く要請して止みません。
市民会議ニュース 2008.7.5 NO.133
第169回通常国会閉会

アイヌ先住民決議、衆参両院で可決!
ハンセン病基本法、改正被爆者援護法など成立!


衆参「ねじれ」国会、議員立法で成果


■恒久平和調査局設置法案は継続審査

1月18日に召集された第169回通常国会は会期を6日間延長し、6月21日、156日間の会期を閉じた。
「ねじれ国会」で法案成立が進まないとされながら、アイヌ先住民決議が衆参両院で可決されたのを初め、ハンセン病基本法や改正被爆者援護法など議員立法が成立したことは与野党の政策協議の結果として評価できる。
また、朝鮮半島出身者でBC級戦犯に問われた人々に対する給付金を支給する法案が5月29日、戦後初めて国会に提出されたことも注目に値する。同法案は恒久平和調査局設置法案とともに衆議院で継続審査になったが、両法案とも次期臨時国会では実質審議に入ることを期待したい。
参議院では「慰安婦」問題の解決を促進する法案が会期末の6月10日に提出されたが、問責決議案の可決などの影響で廃案になった。「慰安婦」問題では米下院で決議が採択されて一周年を迎えることから、8月初めに米下院外交委員会の小委員会で公聴会を開いたフォレオマバエガ下院議員の来日が予定されている。

■恒久平和議連、辛淑玉さんを講師に公開ヒアリングを開催

在日コリアン3世の辛淑玉(シン・スゴ)さんは3月18日、国会内で開催された恒久平和議連(会長:鳩山由紀夫)の公開ヒアリングで超党派の国会議員を前に「在日の参政権を早く認めるべき」と日本社会の人権感覚の問題点を指摘した。
辛淑玉さんは米国の市民権取得歓迎式の模様を紹介、各国から訪米し市民権を得た人々が米国に帰属する意識が芽生えるのに対し、日本では血のつながりが重視されるあまり在日韓国・朝鮮人を差別、排除する傾向があり、在日コリアンに日本への所属意識が生まれないと自分自身に経験に照らして講演した。

■高村外務大臣、遺骨返還式は韓国側と調整

近藤昭一衆院議員は3月26日の衆議院外務委員会で、1月22日に目黒区の祐天寺で行われた遺骨返還式典でマスコミ関係者が取材規制されたことや遺骨返還に取り組んできた市民の参列が拒否された事実を取り上げ、開かれた式典にすべきではなかったかと政府側を質した。
高村正彦外務大臣は式典を静謐な環境で行なうとの日韓合意の上でなされたものと理解しているが、韓国側の意向を踏まえた上で調整しながら進めると答弁した。
この質疑を受けて6月に今野東参院議員が質問主意書を提出、遺骨問題の解決を促した。

Contents NO.133
第169回国会閉会/公開ヒアリング:辛淑玉さんの講演/文書管理法制の確立求め中間報告!有識者会議詳報/清瀬市議会「慰安婦」意見書全文
市民会議ニュース 2008.10.1 NO.134
第170回臨時国会開会  9月24日 麻生新内閣発足

公文書管理担当相に小渕優子議員
公文書有識者会議は10月、最終報告提出へ


解散・総選挙をにらみ政局は波乱含み


■図書館法改正案は衆院議運に審査を付託

第170回臨時国会は9月24日に召集され、福田内閣の総辞職を受けて首班指名選挙が行われ、麻生太郎新内閣が発足した。会期は11月30日までの68日間だが、解散・総選挙をにらみ政局は波乱含みの展開になりそうだ。
福田前首相が重要政策として進めていた政府の公文書管理制度の確立については上川陽子担当相から内閣改造で中山恭子担当相となったが、麻生内閣で新たに小渕優子担当相に移った。小渕優子担当相は福田前首相が
音頭をとって組織した与党の公文書館推進議員懇談会の事務局長。9月25日に開催された政府の公文書管理有識者会議に出席した小渕担当相は「他国に比べて立ち遅れている公文書管理制度を確立するために努力したい」と就任の挨拶を行った。有識者会議は10月16日に第12回会合を行い、最終報告を取りまとめる。
継続審査となっていた恒久平和調査局設置法案は24日付で衆議院議院運営委員会に審査を付託したが、解散になれば審議未了・廃案となる。

■オランダ駐日大使、「慰安婦」強制は明白な事実

米下院本会議で07年7月、日本政府に旧日本軍による「慰安婦」被害者への公式謝罪を求める決議が採択されて一周年を記念し、8月7日、「慰安婦」問題の解決を求める院内集会が開催された。 台湾から参加した被害女性の陳桃(チェン・タオ)さんは、日本語で涙を拭いながら通学途中に警察官に強制的に連れ去られたことや戦後も親戚から差別されたことなどを語った。米下院と同様の動議を可決したオランダのフィリプ・ヘール(Philpde Heer)駐日大使は、オランダにとって、オランダ人女性がインドネシアで日本軍によって「慰安婦」を強制されたことは明白な事実であって日本の安倍前首相が強制した事実はないと発言したことに驚いたと日本政府の認識不足を指摘した。

■国会図書館に法務省資料閲覧禁止の解除を申入れ

市民会議は8月22日、国立国会図書館が法務省資料を閲覧禁止にした問題で、同図書館の閲覧禁止措置に抗議するとともに閲覧禁止措置の解除を申入れた。国会図書館の措置は法務省の圧力ではないかとの質問に対し、同図書館は圧力ではなく、自主的に判断したと説明した。しかし、質疑で同図書館は法務省の資料返却の申出に対し、資料の利用制限の方法があることを説明し、閲覧禁止で法務省と了解に達したことが明らかになった。市民会議は国会図書館との交渉ののち、衆参両院の全議員に閲覧禁止措置の真相究明を要請した。
その後、国会図書館は9月8日に法務省資料を目録に再掲載したが、一般国民への閲覧禁止措置は継続している。国会の衆議院図書館運営小委員会では閲覧禁止の根拠法規となっている利用制限に関する内規の削除を求める意見が出され、今後の検討課題となっている。


Contents NO.134
第170回国会開会/国会図書館の閲覧禁止問題で申入れ/有識者会議の文書管理中間報告に意見書提出/調査会法情報より
市民会議ニュース 2008.12.1 NO.135
第170回臨時国会    有識者会議の最終報告を受け、公文書管理法、次期通常国会に提出へ

文書管理を内閣府に一元化し、中間書庫を整備

国立公文書館は「特別の法人」に改組


■公文書管理法制の確立へ前進

公文書管理の在り方を検討していた政府の有識者会議(尾崎護座長)は2008年11月4日、最終報告を小渕優子担当相に提出した。小渕担当相から報告を受けた麻生太郎首相は、来春の次期通常国会に公文書管理法案を提出できるよう立案することを指示した。これによって国際的に立ち遅れていた公文書管理制度が前進することになる。

■麻生首相、「村山談話」・「河野談話」を踏襲

麻生太郎首相は2008年10月2日、衆院本会議で日本の過去の侵略と植民地支配を謝罪した1995年の「村山談話」を踏襲する考えを表明。10月15日の参議院予算委員会では「慰安婦」問題について旧日本軍の関与を認め謝罪した93年の「河野談話」を踏襲すると述べた。

■韓国国会、「慰安婦」決議可決

麻生太郎首相は2008年10月2日、衆院本会議で日本の過去の侵略と植民地支配を謝罪した1995年の「村山談話」を踏襲する考えを表明。10月15日の参議院予算委員会では「慰安婦」問題について旧日本軍の関与を認め謝罪した93年の「河野談話」を踏襲すると述べた。

■民主岡田氏、首相の靖国改革案を批判

 民主党の岡田克也副代表は2008年10月7日、衆院予算委員会で麻生首相が外相時代の06年に靖国神社が宗教法人を任意解散して祭式の非宗教的・伝統的な特殊法人に移行する私案を発表していることに対して、「国の施設にすることに違和感を持つ。信教の自由との関係はどうなるのか」とただした。首相は「宗教法人であるが故に難しいということなので、いろんな形がある」としたうえで「私の意見を押しつけるつもりはなく、広く議論した上で結論を得てほしい」と述べるにとどめた。