2014年 市民会議ニュース


市民会議ニュース 2014.3.9 NO.156
第186通常国会  特定の歴史認識で統制進むNHKと教科書

翼賛体制化する日本に危惧

〜 安倍首相の靖国参拝で日本は国際社会から孤立 〜


安倍晋三総理は昨年の12月26日、第二次安倍内閣発足一周年に靖国神社を参拝しました。首相の靖国神社参拝は近隣諸国の人々の気持ちを傷つけると同時に日本自身を国際社会から孤立する契機となりました。米国大使館は即座に「日本の指導者が近隣諸国との緊張を悪化させるような行動を取ったことに、米国政府は失望している」との談話を発表。近隣諸国は、A級戦犯を祀っている靖国神社への参拝は日本の軍国主義の復活を意味し、「国際連合憲章」に基づく戦後の国際秩序に挑戦する行為であると批判しました。その後も衛藤晟一首相補佐官や本田悦朗内閣官房参与の問題発言が続発し、安倍政権の中枢は尋常ではありません。

■NHKの国営放送化と歴史教科書の国定化に懸念

また歴史認識を巡っては、NHKの籾井勝人会長の就任会見での発言や百田尚樹、長谷川三千子両経営委員の言動によって公共放送としてのNHKが国営放送化するのではないかという疑念を抱かせました。さらに文部科学省は、近現代史に政府見解を明記するよう求める教科書検定基準の改定や学習指導要領解説書の改訂などを矢継ぎ早に行い、歴史教科書の国定化に道を開くのではないかと思わせる改革が進行しています。
第186通常国会は冒頭から靖国神社参拝問題やNHK会長発言が取り上げられ、論戦が繰り広げられました。その国会は国民投票法改正や集団的自衛権に対する見解で与党と「責任野党」が合意するとの見方が出ており、戦前の大政翼賛会を彷彿させるような動きになっています。私たちは安倍政権の下、国会で進む翼賛化の動きや、戦前回帰の歴史認識で統制が進むNHKと歴史教科書の動きに危惧の念を持たざるを得ません。

■安倍総理は靖国ではなく戦没者追悼式で「不戦の誓い」を

安倍総理は靖国神社参拝後に「日本は、二度と戦争を起こしてはならない。私は、過去への痛切な反省の上に立って、そう考えています。戦争犠牲者の方々の御霊を前に、今後とも不戦の誓いを堅持していく決意を、新たにしてまいりました」とする談話を発表しました。談話は靖国神社参拝後の談話であり、靖国神社において「不戦の誓い」がなされたのかどうかは誰にも分かりません。安倍総理は昨年の8月15日における政府主催の全国戦没者追悼式における式辞で、例年の式辞にある「不戦の誓い」を省略し、歴代の総理が触れてきたアジア諸国への加害と反省に関しては明言しませんでした。本来であれば、国民の目の届かない靖国神社ではなく全国戦没者追悼式で「不戦の誓い」やアジア諸国の人々に対し多大の損害と苦痛を与えたお詫びを口にすべきであります。

■戦後70年までに「過去の克服」を

今年は日清戦争から120年、第一次世界大戦から100年という節目の年であり、来年は戦後70年を迎えます。この2年間は日本が行ったかつての「植民地支配と侵略」に否応なく向き合うことになります。このときにこそ、戦争被害の歴史的事実を直視するために戦争被害の公的な調査を行うべきではないでしょうか。戦争被害の公的な調査を行うことによってアジア諸国の人々に戦争への反省を態度で示し、お互いに「過去の克服」へと歩むことができると考えます。私たち市民会議は改めて、政府が保管している戦時中の資料を調査する恒久平和調査局の設置を求めます。国は歴史事実の公的調査に着手し、「未来への説明責任」を果たしてもらいたいと念願しています。


Contents NO.156
翼賛化する日本に危惧/恒久平和調査局の設置を要請/靖国神社参拝は政教分離に違反/「許せない!」靖国神社参拝 西川重則/靖国参拝の反響/国営放送化するNHK/歴史教科書の国定化/強制動員真相究明全国研究集会の案内/挺身隊訴訟で賠償命令

衆参全国会議員に恒久平和調査局の設置を要請    2014年1月24日
〜 戦後70年までに戦争被害の事実と向き合うために 〜

第186回通常国会が招集された1月24日、市民会議は衆参両院全国会議員に恒久平和調査局の設置を要請しました。通常国会は安倍首相が昨年末に靖国神社を参拝したことから、改めて安倍首相の歴史認識が問われることになりました。またNHKの籾井勝人会長の就任記者会見での発言や経営委員の百田尚樹(作家)、長谷川三千子(埼玉大名誉教授)両委員の言動が問題となりました。さらに韓国の元「慰安婦」被害者の証言が否定的に取り上げられ、政府が「証言」を検証する事態に発展しました。これに対し、韓国の朴大統領は3・1節の演説で「慰安婦」問題に言及、日本政府を痛烈に批判しました。中国は9月3日を抗日戦争勝利記念日に、12月13日を南京大虐殺追悼記念日にそれぞれ制定するなど戦後70年を見据えた取り組みを始めています。私たちはアジア諸国との友好と「過去の克服」を進めるために、日本の「植民地支配と侵略」による被害の実態を公的に調査することが必要だと考えています。


【要請文】

国会議員のみなさまへ  2014年1月24日

「歴史の事実」の公的調査を
〜 戦後70年までに戦争被害の事実と向き合うために 〜

2014年の通常国会の開会に当たり、国会議員の皆さまの働きに感謝しつつ、日本とアジア諸国との平和と友好を進めるために特段のご配慮を賜りますようお願い申し上げます。

■「歴史に対して謙虚」な態度を

安倍晋三総理は昨年の全国戦没者追悼式の式辞で、「歴史に対して謙虚に向き合い、学ぶべき教訓を深く胸に刻む」と述べました。そうであるならば、「村山談話」に沿って「植民地支配と侵略」に対する真摯な対応がなされるべきではないでしょうか。

しかし安倍総理は昨年末に靖国神社を参拝、韓国や中国ばかりか、アメリカやEU諸国から批判される事態を招きました。A級戦犯が祀られている靖国神社は戦前戦中を通して、国の機関として存在し、長期にわたる「植民地支配と侵略」の象徴として国際社会に認知されています。安倍総理が「中国、韓国の人々の気持ちを傷つける考えは毛頭ない」と弁解しても国際社会には通用しません。特に特定秘密保護法が成立した直後の参拝だけに、戦前の軍国主義を賛美する出来事だったと思われても仕方ありません。

2014年は日本の台湾出兵から140年、日清戦争から120年、日露戦争から110年、第一次世界大戦から100年という節目の年です。2015年には戦後70年を迎えます。これからの2年間は日本が行った「植民地支配と侵略」に否応なく向き合うことになるでしょう。

戦後70年までに日本は韓国や中国など東アジア諸国との歴史和解と友好促進のために努力を傾けていかなくてはなりません。「歴史の事実」を直視し、「植民地支配と侵略」の歴史事実を公的に調査することが相互理解を助けてくれるでしょう。近隣諸国とは力で対抗するのではなく、「歴史に対して謙虚」であることを態度で示し、平和に徹し、対話を進めていくことが求められています。

■国会図書館に「恒久平和調査局」の設置を

私たちは日本がアジア諸国に対して行った戦争の歴史の事実をより深く公的に調査し、調査で得た歴史の事実を各国で共有することが、アジア諸国の人々との友好親善を深めるための基礎になるだろうと確信しています。
国会が超党派で歴史事実を調査する恒久平和調査局を国会図書館に設置し、未来に向けて、東アジアに平和のメッセージを発信するよう期待するものです。

市民会議ニュース 2014.6.26 NO.157
第186通常国会閉会   「慰安婦」、「歴史認識」で分裂進む国会

戦後70年を見据え、「過去の克服」を

〜 被害者の目線で事実に基づく真相究明が鍵 〜


安倍晋三首相の靖国神社参拝問題で始まった第186通常国会。米国の助言があり、日韓、日中関係は歴史問題で対立をはらみつつも、日米韓首脳会談が行われることでひとまず終息。終盤国会は「集団的自衛権」行使を巡る論議に終始する国会になりました。ウクライナ情勢も加わり、国際情勢は複雑化。「歴史認識」と自由主義的「価値観」による複合的な対立は、各国の立ち位置によって対応の変化を生み、2015年の第二次大戦終結70年を見据え、国内のナショナリズムに配慮しつつ、国際協調をどのように進めるかというアンビバレンス(ambivalence)な状況を呈しています。国会は閉会、改めて歴史認識が問われる夏を迎えます。

■「河野談話」を巡る攻防  「聞き取り」裏付けと「強制連行」の事実

「河野談話」見直しを求める山田宏衆院議員が2月、衆院予算委員会で石原信雄元官房副長官に質問。元「慰安婦」聞き取りの裏付けや日韓間での談話調整問題を質しました。この質疑に対し菅官房長官は、機密を保持しながら談話の検証を進めることを表明、4月下旬から検証を行い、「事実関係をゆがめない範囲」で日韓間の文言調整が行われたとする検証結果を6月20日に公表しました。一方、第一次安倍内閣の強制連行を示す証拠がなかったとする答弁書の不備を指摘する質疑も行われました。神本美恵子参院議員は中曽根康弘元首相が海軍主計大尉の時に「慰安所をつくってやった」と記述し、公文書に「土人女を集め慰安所を開設」とある事から、中曽根氏から聞き取りを行うよう求めました。また赤嶺政賢衆院議員は「バタビア臨時軍法会議の記録」を取り上げ、「河野談話」発表前の1992年7月に外務省が資料を入手しており、政府として「慰安婦」強制連行の事実を承知していたではないかと追及しました。

■「教科書」記述に関する攻防 「村山談話」と「河野談話」は「政府の統一的な見解」か

文部科学省は1月、教科書検定基準を改定し、近現代史の記述に「政府の統一的な見解」を明記するよう求めました。菊田真紀子衆院議員は2月、「村山談話」と「河野談話」は「政府の統一的な見解」に該当するか否かを質問したところ、下村文部科学大臣は両談話とも閣議決定されたものではないので該当しないと答弁しました。その一月後の3月、宮本岳志衆院議員が質問をしましたが、同様の答弁でした。質問者も答弁者も文部科学委員会出席者の誰一人として下村大臣答弁の間違いに気がつきませんでした。「村山談話」は正式に閣議決定を経ており、下村大臣は4月9日になってようやく答弁を訂正しました。下村大臣は「村山談話」が閣議決定していたことを認めるとともに、「河野談話」も政府答弁書で閣議決定されていることを認め、両談話とも「政府の統一的な見解」に該当すると答弁しました。吉川元衆院議員はなぜこのような間違った答弁がなされたかを質問したところ、下村大臣は「事務方から上がってきたペーパー」を信じた自分のミスだと謝罪しました。

■戦後70年を「過去の克服」の年に

市民会議は一貫して戦争被害の歴史的事実を直視するために戦争被害の公的な調査を行うことを求めてきました。2015年の戦後70年までに被害者の目線で事実に基づく真相究明を行い「過去の克服」に取り組むことが必要だと考えています。ここに改めて、政府が保管している戦時中の資料を調査し、公開する恒久平和調査局の設置を求めます。国は歴史事実の公的調査に着手し、「未来への説明責任」を果たしてもらいたいと思います。


Contents NO.157
戦後70年、「過去の克服」を/「慰安婦」問題アジア連帯会議/靖国神社参拝を巡って/「河野談話」検証報告/中国の国家記念日制定/重慶大爆撃訴訟が大詰め/中国の強制連行訴訟/韓国の関東大震災朝鮮人虐殺真相究明法/関釜裁判ニュース記録集完成

市民会議ニュース 2014.10.3 NO.158
第187臨時国会   「慰安婦」問題で国際社会から孤立する日本

歴史認識が問われる戦後70年

〜 日本の「植民地支配と侵略」の事実調査を 〜


安倍晋三首相は昨年に引き続き、今年も全国戦没者追悼式の式辞で戦争への反省と不戦の誓いはなく、アジア諸国へのお詫びの言葉もありませんでした。来年は戦後70年。日本の「植民地支配と侵略」に対する歴史認識が問われる年を迎えます。懸案の「慰安婦」問題は、政府の「河野談話」検証報告や朝日新聞の「慰安婦」記事検証に端を発して、国内では「強制連行」は虚報とする論陣が勢いを得ていますが、国連など国際社会では女性を「強制的に連行」したのではないとする日本政府の説明が「本人たちの意に反して行われた」とする河野談話に矛盾していると批判されています。「慰安婦」問題の解決には、戦時中に陸海軍が「兵の性問題解決策」のために「軍慰安所」制度を創設したという事実を認めることが必要です。その「軍慰安所」制度の下で、各国の女性を「慰安婦」として動員し、兵の性処理を強要したことは明らかです。このような女性に対する人権侵害に対し、日本政府として真摯な対応が求められているのです。

■中国、韓国との関係改善が最優先の課題

韓国の朴大統領は日韓国交正常化50年を来年に控え、8月15日、「慰安婦問題を正しく解決するとき、韓日関係が健全、着実に発展し、来年を両国民が共に祝うことができる」と述べました。日本政府は朴大統領の要請に応え、「軍慰安所」制度の非人道性を認め、無条件の対話ではなく、具体的な「慰安婦」問題の解決策を提示する「知恵と決断」が必要です。その上で日韓首脳会談を実現させ、来年の6月22日を新たな50年の門出にしなければならないと考えます。また日中関係も同様に関係改善が最優先の課題です。習近平国家主席は9月3日、「日本軍国主義が(中国を)侵略した歴史を深刻に反省することが、日中関係の重要な政治的基礎になる」と指摘しつつ、「中国は(中日)関係発展に努力し、4つの政治文書に基づいて関係の長期的で安定的で健全な発展を望む」と演説しました。

■「正本清源 標本兼治」

中国の外交部長を務めた唐家?氏は6月、長崎で開催した中日友好21世紀委員会の意見交換会の席で、歴史感情や利害の衝突で国交正常化以来、最も厳しい局面に陥っている日中関係を打開するには、両国が「正本清源 標本兼治」に徹して努力することだと述べています。「正本清源」とは物事を本来の姿に戻し、根本から解決することであり、「標本兼治」は病気治療と同様に応急処置と根治治療が同時に必要という意味だということです。中国は1972年の日中共同声明の原則に立ち戻れば物事は解決するというメッセージに受け取れます。特に安倍首相を始め、閣僚による靖国神社参拝は中国の人々を傷つけたことは間違いありません。日本政府は「日中共同声明」と「村山談話」に沿って戦後70年までに日中首脳会談を実現させて不正常な関係を払拭することが求められています。

■戦後70年を「過去の克服」の年に

市民会議は1997年以来、戦争の惨禍に関する公的調査を行うことを求めてきました。2015年の戦後70年までに被害者の目線で事実に基づく真相究明を行い「過去の克服」に取り組むことが必要だと考えています。ここに改めて、政府が保管している戦時中の資料を調査し、公開する恒久平和調査局の設置を求めます。国は歴史事実の公的調査に着手し、「未来への説明責任」を果たしてもらいたいと思います。

第187回国会で全国会議員に要請    2014年9月29日
〜 歴史と謙虚に向き合い、「植民地支配と侵略」の被害調査を要望 〜

市民会議は第187回国会(臨時)が召集された9月29日、「戦後70年に向けて、韓国、中国との信頼回復を」実現するよう衆参両院全国会議員に恒久平和調査局設置法の制定を要請しました。

【要請文】

国会議員の皆さまへ        2014年9月29日

戦後70年に向けて、韓国、中国との信頼回復を

臨時国会の開会に当たり、国会議員の皆さまの働きに感謝しつつ、日本とアジア諸国との平和と友好を進めるために特段のご配慮を賜りますようお願い申し上げます。

■歴史と謙虚に向き合うことが大切

安倍晋三総理は8月15日、全国戦没者追悼式の式辞で、「歴史に謙虚に向き合い、その教訓を深く胸に刻」むと述べました。しかし残念ながら、安倍総理がかつての式辞で触れられた戦争の反省と不戦の誓いはなく、アジア諸国へのお詫びの言葉もありませんでした。
韓国の朴槿恵大統領は同日、日本植民地支配から解放された「光復節」の演説で、「(韓日の)友好協力関係に進む」ために、「両国間に残る過去の歴史の傷を癒やす努力が必要だ」と述べ、日本に「慰安婦」問題などの解決を求めました。
中国の習近平国家主席は9月3日、抗日戦争勝利記念日に行われた座談会で、「日本軍国主義が(中国を)侵略した歴史を深刻に反省することが、日中関係の重要な政治的基礎になる」と指摘しつつ、「中国は(中日)関係発展に努力し、4つの政治文書に基づいて関係の長期的で安定的で健全な発展を望む」と演説しました。
来年の2015年は日韓国交正常化50周年、日中共同声明43周年、戦後70周年を迎えます。私たちは今こそ、不正常な日韓、日中関係を正常な友好関係に戻さなくてはならないと考えます。
両国間に横たわった歴史問題を解決するためには、「歴史の事実」を直視し、「植民地支配と侵略」の歴史事実を公的に調査することが相互理解を助けてくれるでしょう。近隣諸国とは力で対抗するのではなく、歴史と謙虚に向き合うことが大切です。

■国会図書館に「恒久平和調査局」の設置を

私たちは日本がアジア諸国に対して行った戦争の歴史の事実をより深く公的に調査し、調査で得た歴史の事実を各国で共有することが、アジア諸国の人々との友好親善を深めるための基礎になるだろうと確信しています。
国会が超党派で歴史事実を調査する恒久平和調査局を国会図書館に設置し、未来に向けて、東アジアに平和のメッセージを発信するよう期待するものです。

市民会議ニュース 2014.11.26 NO.159
第187臨時国会  安倍首相が衆議院を解散、12・14総選挙へ

「慰安婦」・歴史認識も争点に

〜 戦後70年に歴史を正視できる政権を 〜


安倍晋三首相は11月18日、消費税の再増税を先送りし、衆議院を21日に解散する意向を表明しました。その言葉通り、21日午後、衆議院は解散され、第47回衆議院議員総選挙は12月2日公示、14日投開票で行われます。安倍首相は「アベノミクス解散」と称していますが、実際は安倍政権2年間の是非が問われることになります。第二次安倍政権は発足当初こそ、「安全運転」を心がけていましたが、参議院議員選挙でねじれを解消すると、特定秘密保護法制定、靖国神社参拝、「河野談話」検証、原発再稼働、集団的自衛権容認の閣議決定と矢継ぎ早に強権的な政権運営を行ってきました。総選挙では「慰安婦」問題や歴史認識も大きな争点です。来年は戦後70年の節目の年、過去の歴史を正視できる政権選択に期待します。

■「河野談話」を巡る攻防は第二段階に 「吉田証言」と河野長官発言

「河野談話」を巡る攻防は政府の検証結果報告書によって、元「慰安婦」への聞き取りや日韓間の調整が談話に反映されていなかったことが判明し、第二段階に入りました。問題とされているのが、朝日新聞の記事取り消しに象徴される「吉田清治証言」と河野官房長官の談話発表後の記者会見における発言です。安倍首相は10月3日、辻元議員の質問に答えて、吉田証言自体が強制連行の大きな根拠になっていたのは事実であり、河野長官の強制連行を認めた発言によってイメージがつくり上げられている、と答弁しました。安倍首相は産経新聞(11月20日付)のインタビューでも吉田証言が海外に喧伝された結果、日本の名誉が傷ついたとの認識を明らかにし、「慰安婦」とされた女性の人権回復よりも日本の名誉回復に力点を置く姿勢を見せています。

■歴史学界や「慰安婦」支援団体は 「談話」無力化を糾弾

政府の検証報告書や朝日新聞の記事取り消しに端を発し、「慰安婦」強制否定を「吉田証言」や「長官会見」に求めようとする動きに対し、歴史学界や支援団体は一斉に糾弾する声明を出しました。歴史学研究会は10月15日、「吉田証言の内容の真偽にかかわらず、日本軍が「慰安婦」の強制連行に深く関与し、実行したことは、揺るぎない事実である」との声明を発表。台湾の婦女救援基金会は10月17日、『朝日新聞』の報道撤回問題にかこつけて、再度河野談話と国連の調査報告を否定しようと目論んでいる。このような恥知らずの政治家に対して、婦女救援基金会は厳しく糾弾する、との声明を発表しました。また日本政府が訂正を求めた慰安婦を「性奴隷」と表現した1996年の国連報告書の作成者のクマラスワミ氏は、吉田証言は証拠の一つにすぎず、「慰安婦」たちは逃げる自由がなく、「性奴隷」と定義したのは妥当だと述べ、撤回を拒否しました。

国会軽視は立憲政治否定

安倍政権は国会を軽視し、内閣だけで日本の進路を決めていく手法であり、議会制民主主義から外れているといって過言ではありません。これは立憲政治の否定でもあります。かつて立憲政友会が議院の三分の二に迫る301議席を占めた1932年の第18回総選挙の直後、社会民衆党の安部磯雄は「立憲政治の将来」という論文で、忍び寄るファシズムに抗して「立憲政治を護れ」と訴えています。今日の情勢は、安部磯雄の警告を想起すべき時代を再び迎えているのではないでしょうか。


Contents NO.159
解散・総選挙 「慰安婦」・歴史認識も争点/「河野談話」に関する国会質疑/台湾婦女救援基金会の声明/廃娼運動と「慰安婦」問題 (下) 川村一之/チチハル毒ガス訴訟敗訴/韓国挺身隊訴訟で賠償命令/韓国文化財返還調停却下/朝鮮人追悼碑問題で群馬県を提訴/市民会議会計報告