市民会議ニュース 2016.12.1 NO.167 (2016.12.4更新) |
日本政府がユネスコ分担金を凍結 〜 日本の登録推進団体には「脅迫状」届く 〜 日本政府はユネスコに支払うべき2016年の分担金約38億5千万円を凍結していることが判明しました。例年は予算が成立した時点で支払っていましたが、10月になっても「保留」していることを外務省が明らかにしました。これは昨年、中国が申請した「南京大虐殺の記録」を日本政府が反対したにもかかわらず、ユネスコが「世界の記憶」遺産に登録したことに対する報復措置と見られています。10月20日、岸田文雄外務大臣は参議院外交防衛委員会の質疑で、分担金「保留」が「世界の記憶」事業の制度改善と関係していることを認める答弁を行いました。岸田外相の言う制度改善とは「世界の記憶」遺産への登録に当たっては加盟国の合意を求めるというものです。このことは今年5月末に登録申請された「慰安婦」被害記録の登録を阻止する目的があると受け止められています。 Contents NO.167 |
市民会議ニュース 2016.9.26 NO.166 (2016.10.1更新) |
ユネスコ「世界の記憶」遺産 「『慰安婦』の声」をノミネート 「慰安婦」被害記録を世界遺産に 〜 8か国・地域から2744件を申請 〜 旧日本軍「慰安婦」記録が2016年5月31日、ユネスコ「世界の記憶」遺産の登録にノミネートされました。申請された「慰安婦」記録は2744件。「慰安婦」を強要された被害者の声を世界記憶遺産に登録しようと8か国・地域の関係する14団体が共同申請しました。ユネスコの国際諮問委員会は申請された記録を審査し、2017年10月頃に審査結果を発表するとしています。9月9日、「慰安婦」記録の共同登録を推進した日本委員会が主催する報告集会が都内で開催されました。基調講演を行ったオーストラリア国立図書館の元アーキビストで審査に携わったこともあるレイ・エドモンドさんは、「これまでは戦争の勝者が歴史を書いてきたが、これからは戦争の被害者が歴史を書くことになる」と記録遺産登録の意義を語りました。 ■公文書だけでなく被害者の証言記録を申請 レイさんの話にあるようにユネスコ世界記憶遺産に登録された328件(2015年10月現在)の中で人権問題に関わる登録が増えています。既に「アンネの日記」、光州民主化蜂起、カンボジア虐殺、南京大虐殺、アパルトヘイト、ワルシャワゲットー、パレスチナ難民、シベリア抑留などが登録されています。登録を推進する韓国の韓恵仁(ハン・ヘイン)さんは光州民主化蜂起記録の登録に学び、「慰安婦」問題は公文書に加え、被害者の証言記録と各国での支援運動の記録を「日本軍『慰安婦』の声」にまとめて申請することを考え、各国に働きかけたということです。韓国からは「慰安所管理人の日記」など660件が、中国は約40カ所の慰安所記録などを申請しました。 ■日本人「慰安婦」手記も申請 日本からは日本で行われた「慰安婦」裁判の記録を中心に被害者の証言テープなどが申請されています。沖縄に連行された「奉奇(ペ・ポンギ)さん、在日の元「慰安婦」被害者・宋神道(ソン・シンド)さん、中国の万愛花さんの記録と共に日本人「慰安婦」だった城田すず子さんが書き残した膨大なノートも申請されました。台湾の婦女救援基金会は、これまでに収集した5772件から日本統治時代の多国籍企業の慰安所設置に関する書類や、当時の関連記事、元慰安婦の証言や写真など271件を選んで申請しています。被害者の記録としては、韓国の大邱のある病院が記録した被害者の診療記録、フィリピンのリラ・ピリピーナが提供したフィリピンの被害調査記録も含まれています。 ■各国の博物館・公文書館も協力 記録の申請には各国の博物館や公文書館が所蔵する「慰安婦」記録の提供に協力しました。「大英帝国戦争博物館」は共同申請に加わったほか、韓国、中国、オランダ、英国、オーストラリア、米国の国立公文書館と戦争記念館などが登録申請を了解しています。「慰安婦」記録の登録をめざす日本委員会は2015年8月1日に発足。来年夏からノミネートされた記録が順次、審査され、10月に登録の可否が発表されることから、世界記憶遺産登録推進キャンペーンを行うことにしています。 Contents NO.166 「慰安婦」被害記録を世界遺産に/書評 近藤昭一著『立憲主義にこだわる』 西川重則/洲崎遊廓に見る公娼制度の実態 (下)〜 遊廓から軍「慰安所」へ 〜 川村一之 /第14回「慰安婦」問題解決アジア連帯会議 柴洋子/◆第14回アジア連帯会議 決議および行動計画 |
第192臨時国会で全国会議員に要請 2016年9月26日 (2016.10.1更新) |
世界平和に寄与する 〜国会図書館に恒久平和調査局を〜 市民会議は第192臨時国会が召集された9月26日、国立国会図書館に恒久平和調査局を設置するよう、衆参両院の全国会議員に要請行動を行いました。戦後71年を迎えても、未だ日本が与えた「苦難の歴史」を克服するまでには至っていないアジア諸国の人々に対して、日本国が戦争被害の公的調査をする責任があります。今年は日本国憲法公布70周年、来年は日本国憲法施行70周年、国会法制定70周年の節目を迎えます。市民会議は国立国会図書館設置の根拠となった国会法第130条の意義を国会議員の皆さんに問いかけました。 【要請文】 国会議員の皆さまへ 2016年9月26日 世界平和に寄与する 〜国会図書館に恒久平和調査局を〜 今年から来年にかけて日本の戦後を形作った日本国憲法と国会法、そして国会図書館法の制定から70年という節目を迎えます。私たちは第192回国会(臨時)の開会に当たり、これらの基本法に思いをいたし、国会議員の皆様に、日本国憲法の指し示す主権在民・平和主義・国際協調主義に基づく、本来の憲法政治の実現に努力され、日本とアジア諸国との平和と友好を進め、世界の平和に寄与されるべく特段のご配慮を賜りますようお願い申し上げます。 ■国会法130条の意味を問い直す 国会法は国会が日本国憲法第4章の規定する国権の最高機関の役割を担うべく1947年年4月30日法律第79号として制定され、憲法と同日施行されました。その国会法は第130条で議員の調査研究に資するため、別に定める法律により、国会に国立国会図書館を置くと定めました。国会法に基づいて国立国会図書館法が制定されたのは1948年2月9日でした。国会図書館法は前文で「国立国会図書館は、真理がわれらを自由にするという確信に立つて、憲法の誓約する日本の民主化と世界平和とに寄与することを使命として、ここに設立される。」と謳っています。日本国憲法制定70年を迎える今日こそ、国立国会図書館の使命を再認識する必要があるのではないかと思います。 ■歴史事実の調査を「恒久平和調査局」で ユネスコは昨年、「シベリア抑留記録」と「南京大虐殺記録」を「世界の記憶」遺産に登録しました。私たちは戦後70年を超えてもなお未解決の問題を直視するために戦争被害の公的調査を求めてきました。戦争被害の歴史的事実を公的に調査し、調査で得た歴史の事実を各国で共有することが、アジア諸国の人々との友好を深めるための基礎になると確信しているからです。国立国会図書館はこのような事業を行うのにもっともふさわしい機関です。国会が超党派で歴史事実を調査する恒久平和調査局を国会図書館に設置していただくよう要望いたします。 ■「恒久平和調査局」設置法案とは 恒久平和調査局を設置する「国会図書館法改正案」は、1998年に鯨岡兵輔、鳩山由紀夫、浜四津敏子、武村正義、土井たか子の各議員が呼びかけ人となって結成された超党派の「恒久平和のために真相究明法の成立を目指す議員連盟」が発議した法律案です。その目的は、大戦の惨禍の実態を明らかにすることによってアジア諸国との信頼を図り、日本の国際社会における名誉ある地位を保持する、としています。法律案は1999年8月に衆議院に初提出。衆議院の解散で審議未了となり、3回にわたって再提出。この間、衆議院議院運営委員会の図書館運営小委員会において提案理由の説明と質疑が行われています。 |
市民会議ニュース 2016.5.25 NO.165 (2016.5.28更新) |
日韓「慰安婦」合意 その後 女性差別撤廃委員会で「慰安婦」問題を審査 国連委は被害回復など5項目を要求 無神経な日本政府 〜 杉山外務審議官は「慰安婦」強制を否定 〜 国連女性差別撤廃委員会は2016年2月、ジュネーブの国連欧州本部において、第63会期を開催。2月16日に第7回及び第8回の日本政府報告書に対する審査が行われました。昨年末に日韓両国が合意した「慰安婦」問題が委員会の場でどのように議論されるか、また最終所見で委員会がどのような見解を出すか注目されました。 ■日本政府は議題とすることに反対 日本政府は冒頭ステートメントで、「慰安婦」問題は、日韓両政府間で「最終的かつ不可逆的」に解決されることが確認されたと報告したものの、「慰安婦」問題は女性差別撤廃条約締結以前の問題であり、委員会で取り上げるのは適切でないと議題とすることに反対しました。 ■委員は「人権侵害は継続している」と反論 ホフマイスター委員は、人権侵害は継続しており、被害者が満足しない限り、委員会がこの問題を取り上げる権限があることは明らか、と委員会で取り上げるのは適切でないとする日本政府の見解に反論しました。そして、日韓合意の法的性格や国連機関による勧告をどのように実行に移すのかと質問しました。 ■杉山審議官が「国連勧告」は事実に反すると応答 これに対し、日本の杉山外務審議官は、「慰安婦」を「強制連行」した事実はなかったし、「20万人」という数字も裏付けがなく、「性奴隷」の表現は事実に反すると述べ、国連機関による勧告の認識そのものを否定しました。 ■委員は日本政府の矛盾を指摘 杉山審議官の発言を聞いたゾウ委員は、日本政府の立場は矛盾していると指摘。「慰安婦」を強制した事実がないのであれば、なぜ河野談話を発表し、日韓合意を行ったのですか。これは歴史の否定ではないのですか、と質問しました。杉山審議官はゾウ委員の指摘は受け入れられるものではなく、事実に反すると反論しました。 ■最終所見は日韓合意に遺憾を表明 3月7日、女性差別撤廃委員会は日本審査の最終所見を発表。委員会は「慰安婦」問題に関して、日本政府は国連人権機関が行った数多くの勧告を実施せず、日韓合意についても被害者中心のアプローチを十分に採用していないことなどで遺憾の意を表明。引き続き、公式謝罪や被害回復措置を提供することによって被害者を救済する措置を行うことを求めるなど5項目の所見を発表しました。 ◆第14回「慰安婦」問題アジア連帯会議を開催 日韓「合意」は解決にならない 元「慰安婦」被害者を支援する各国地域の市民団体は5月18日から20日までソウルで第14回アジア連帯会議を開催。日韓合意後、初の会議では当事者を排除した合意への批判や日韓だけで全ての「慰安婦」問題を終結させようとする日本政府に批判が集中。日韓合意は解決にならず、日本政府にこれまでの「提言」を受け入れるよう求める決議などを採択して閉会した。 Contents NO.165 国連女性差別撤廃委員会・第14回アジア連帯会議/羽仁五郎の『自伝的戦後史』を読む 加藤健一/洲崎遊廓に見る公娼制度の実態 (上) 川村一之/国連委「慰安婦」問題最終所見/近藤昭一『立憲主義にこだわる』/田中甲『創造主義』/李鶴来『韓国人元BC級戦犯の訴え』/朝鮮人の軍人軍属徴用統計/台湾「阿媽の家」開館へ |
市民会議ニュース 2016.2.25 NO.164 (2016.2.28更新) |
日韓「慰安婦」合意 日本政府「責任を痛感」で法的責任回避 被害者ら「合意」無効を宣言 〜 安倍首相は「最終的かつ不可逆的」解決を歓迎 〜 日韓両国政府は2015年12月28日、外相会談を行い、「慰安婦」問題で合意に達したことを発表しました。韓国政府は、第一に日本政府が「責任を痛感している」と公言したこと、第二に安倍首相が改めて日本の総理として「心からおわびと反省の気持ちを表明する」こと、第三に韓国政府が設立する元「慰安婦」支援財団に日本政府が政府予算から10億円を拠出することなどを評価し、決着しました。双方とも「合意」は「最終的かつ不可逆的」解決であることを確認、今後は国連等で「非難・批判」を控えることを約束、さらに韓国政府は「平和の碑(少女像)」撤去を受け入れました。 これに対し、蚊帳の外に置かれた元「慰安婦」被害者ら支援団体は激怒。韓国挺身隊問題対策協議会(挺対協)は韓国政府が「平和の碑(少女像)」の撤去を受け入れたことは屈辱外交と非難、合意無効を宣言しました。韓国の市民団体は2016年1月14日、「韓日日本軍『慰安婦』合意無効と正しい解決のための全国行動」(全国行動)を発足させ、日本政府出資の財団設立に反対し、独自の市民財団「日本軍『慰安婦』正義と記憶財団」(「正義と記憶財団」)を設立するための募金活動を行うことを明らかにしました。 このように「慰安婦」問題に関する日韓両国政府の「合意」は韓国政府と被害者との対立に発展、抜き差しならない軋轢を生んでいます。 ■「法的責任」を回避した日本政府 韓国政府は「日本政府は責任を痛感している」という言葉に法的責任ではないが道義的責任より前進したと評価したようです。アジア女性基金の総理の手紙では「わが国としては、道義的な責任を痛感」という表現でした。韓国政府が納得しても、「道義的」という言葉を削除しただけでは被害者が納得できないのは明白です。しかも岸田外相が記者会見で発言したのみで、安倍首相は朴大統領に「責任を痛感」という言葉を伝えていません。これでは日本政府が「法的責任」を回避し、「慰安婦」合意は玉虫色で決着したと受けとられても仕方ありません。 ■閉ざされる「慰安婦」問題の真相究明 市民会議が調査会法で恒久平和調査局に求めていた「慰安婦」問題に関する調査は、「旧陸海軍の関与による女性に対する性的強制の被害に関する事項」でした。ところが日韓「慰安婦」合意に調査や真相究明に触れた箇所はありません。確かに岸田外相は「軍の関与」を認めました。しかしそれは河野談話(1993年8月4日)をなぞっただけでした。河野談話は加えて、歴史の真実を回避することなく、歴史研究、歴史教育を通じて記憶にとどめることが明記されていました。日韓政府「合意」は河野談話を再確認せず、最終的解決を確認したことで、「慰安婦」問題の調査も終了だと宣言したに等しいものです。 ■置き去りにされた世界の「慰安婦」被害者 「慰安婦」問題は日韓だけにとどまりません。日韓政府「合意」には世界各国に存在する元「慰安婦」被害者への配慮は見当たりません。台湾やフィリピン、オランダ、マレーシアなど韓国以外の被害者は一斉に日本政府に対し、謝罪と賠償の声を挙げました。韓国政府とだけ妥結すれば「慰安婦」問題は決着したという日本政府の対応は卑劣だというしかありません。 Contents NO.164 日韓「慰安婦」合意、被害者は反発/第190通常国会で戦争被害調査を要請/国会議員の皆さんへ 西川重則/韓国強制動員調査委が解散/日韓「合意」全文/挺対協代表と吉見教授インタビュー/各国の反響/「慰安婦」問題理解のために 川村一之/強制動員研究集会の案内 |
第190通常国会で全国会議員に要請 2016年1月4日 |
私たちはこだわります 〜戦争被害の公的調査に〜 市民会議は第190通常国会が召集された1月4日、戦後70年を超えても、未だ日本が与えた「苦難の歴史」を克服するまでには至っていないアジア諸国の人々に対して、日本国が戦争被害の公的調査をするよう衆参両院の全国会議員に要請しました。 【要請文】 国会議員の皆さまへ 2016年1月4日 私たちはこだわります 〜戦争被害の公的調査に〜 日本国憲法公布から70年を迎える2016年の第190回国会(常会)の開会に当たり、国会議員の皆様に、日本国憲法の指し示す主権在民・平和主義・国際協調主義に基づく、本来の憲法政治の実現に努力され、日本とアジア諸国との平和と友好を進め、世界の平和に寄与されるべく特段のご配慮を賜りますようお願い申し上げます。 ■国会図書館に「恒久平和調査局」を 安倍晋三総理は昨年8月14日、戦後70年談話を発表し、日本は「満州事変、そして国際連盟からの脱退」によって「進むべき針路を誤り、戦争への道を進んで行きました」と述べました。さらに「何の罪もない人々に、計り知れない損害と苦痛を、我が国が与えた事実」を認め、「先の大戦における行いについて、繰り返し、痛切な反省と心からのお詫びの気持ちを表明してきました」と続けました。しかしアジア諸国の人々は今日に至っても日本が与えた「苦難の歴史」を克服するまでには至っていません。韓国とは元「慰安婦」被害者のみならず、強制徴用や被爆者などの問題も未解決です。中国では加えて日本軍の生物化学兵器による被害者の問題も残っています。 私たちはこのような未解決の問題を直視するために戦争被害の公的調査を求めてきました。戦後70年を超えた今日においても私たちは「戦争被害の公的調査」にこだわります。戦争被害の歴史的事実を公的に調査し、調査で得た歴史の事実を各国で共有することが、アジア諸国の人々との友好を深めるための基礎になると確信しているからです。国会が超党派で歴史事実を調査する恒久平和調査局を国会図書館に設置していただくよう要望いたします。 ■国会図書館に「恒久平和調査局」を記録保存を「公文書管理法」の充実で ユネスコは昨年、「シベリア抑留記録」と「南京大虐殺記録」を世界記憶遺産に登録しました。私たちは戦争被害の歴史的事実を明らかにする立場から、ユネスコの決定を歓迎します。国会議員の皆様には「公文書管理法」を充実させ、戦時中の第一次資料の保存と公開により一層尽力されることを要望するものです。 |