第197臨時国会で全国会議員に要請 2018年10月24日 (2018.11.3更新) |
「寛容と調和」の政治で 憲法第9条を遵守し続ける決意を 第197回臨時国会が召集された10月24日、私たちは佐藤栄作元総理のノーベル平和賞受賞演説の「憲法第9条を遵守し続ける決意」を引用し、衆参両院の全国会議員に安倍首相の急進的な改憲の動きを容認しないように訴えました。下記は要請書です。 【要請文】 国会議員の皆さまへ 2018年10月24日 「寛容と調和」の政治で 憲法第9条を遵守し続ける決意を 第197回国会(臨時)の開会にあたり、「正当に選挙された国会における代表者」(日本国憲法前文)の皆様に心より訴えます。冒頭の「寛容と調和」の政治とは佐藤栄作総理が所信表明演説で使った言葉です。「憲法第9条を遵守し続ける決意」は、佐藤元総理が1974年のノーベル平和賞を受賞し、受賞記念講演で述べた言葉です。私たち主権者は、日本国憲法の前文にある「政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうに」願っています。国会議員の皆様にあっては日本国憲法第99条を尊重され、平和憲法にふさわしいお働きをされることを望んでおります。 ■佐藤元総理の平和賞受賞講演に学ぶ 佐藤栄作元総理は安倍晋三総理が尊敬してやまない岸信介元総理の弟にあたる方です。ノーベル平和賞を受賞した佐藤元総理は1974年12月11日、「核時代における平和の追求と日本」と題した記念講演を行いました。佐藤元総理は日本国憲法の基本となっているものは人権の擁護と戦争の放棄であるとし、憲法第9条を紹介し、「国民的合意としてこれを遵守し、今後とも遵守し続ける決意」を語りました。憲法9条について佐藤元総理は「ケロッグ・ブリアン条約(パリ不戦条約)の考え方をとり入れたもので、今日の世界では、必ずしも日本一国だけが宣言したものではありません」と述べ、その先見性を誇りました。 安倍総理は佐藤元総理とは裏腹に、昨年5月、憲法9条に自衛隊を明記する改正憲法の2020年施行を目指すと表明、先の自民党総裁選挙では、自民党の「憲法改正案」を「次の国会」に提出し、「早期の発議を目指す」と公約していますが、本当にいいのでしょうか。 佐藤元総理のノーベル賞受賞記念講演に貫かれているのは、「1945年の敗戦という苦い教訓」でした。それは「われわれ日本国民は、永続的な平和を目指して憲法の改正を行いました」という言葉に表されています。 国会議員の皆様におかれましては、ぜひ、佐藤栄作元総理のノーベル平和賞受賞記念講演をお読みいただき、講演内容に学んでいただきたいと切に願っております。 ■「恒久平和調査局」を国会図書館に 今年は国立国会図書館開館70年。国立国会図書館法は前文に「憲法の誓約する日本の民主化と世界平和とに寄与することを使命として、ここに設立される」と記載されています。国会議員の皆様におかれては、国立国会図書館の使命を再認識し、かつての戦争被害を公的に調査する恒久平和調査局を国会図書館に設置して世界平和に寄与されるよう要望いたします。 |
市民会議ニュース 2018.6.1 NO.173(2018.6.1更新) |
第196通常国会 「慰安婦」強制の歴史事実を歪曲 「性奴隷」不使用の秘密合意認める 〜被害者を二重に苦しめる日本政府の「慰安婦」認識〜 日本政府は第196通常国会で、新たに「慰安婦」問題に関する重要な見解を明らかにしました。第一は政府が韓国の日韓合意検証報告で示された秘密合意を認めたこと、第二は「性奴隷」を否定した国連での杉山外務審議官の発言を政府の正式見解にしたこと、第三に韓国政府に合意の実施を求めた「河野外相談話」を外交青書2018に明記したことです。このことは、日本政府が「慰安婦」問題を外交問題化しないとしてきたこれまで立場を転換したことを意味しています。日本政府の「性的奴隷制」批判は被害者を二重に苦しめるものと言わなくてはなりません。 ■河野外相、「非公表を前提としたやりとりは事実」 河野太郎外相は2018年2月7日の衆議院予算委員会で、日韓「慰安婦」合意(2015年12月)に公表しない秘密合意があったことを認めました。河野外相は野党委員に韓国の検証報告書で示された「非公開の内容」は事実かと問われ、「韓国側と調整の結果、非公表を前提としたやりとりがあったのは事実でございます」と答弁しました。韓国の検証報告書には、日本側が韓国側に「性奴隷」の表現を使用しないよう求めたが、韓国側は「性奴隷」が国際的に通用する用語である点などを理由に反対、結局。韓国政府の使用する公式名称は「日本軍慰安婦被害者問題」だけであると確認したと書かれています。韓国政府は秘密合意によって「性奴隷」表現を封じられてしまったのです。 ■「性奴隷」否定は日本政府の見解 また日本政府は3月28日の衆議院外務委員会において、日韓合意後の国連女性差別撤廃委員会(2016年2月)で杉山外務審議官(当時)が発言した「性奴隷」否定発言を政府見解であると明らかにしました。外務省アジア大洋州局の鯰参事官は与党委員の質問に答えて「杉山外務審議官の発言は、日本政府の見解を述べたものでございます」と答弁しました。杉山審議官は国連審査で、「慰安婦」を「強制連行」した事実はなかったし、「20万人」という数字も裏付けがなく、「性奴隷」の表現は事実に反すると発言していました。杉山審議官の発言を聞いた国連委員は、日本政府の立場は矛盾していると指摘、「慰安婦」を強制した事実がないのであれば、なぜ河野談話を発表し、日韓合意を行ったのですか。これは歴史の否定ではないのですか、と発言したほどでした。この杉山発言は昨年の『外交青書2017』(2017年4月)に「日本の立場(例えば、『軍や官憲による強制連行』、『数十万人の慰安婦』、『性奴隷』といった主張については、史実とは認識していないこと)について説明する取組を続けていく」と記述されました。今年公表された「外交青書2018」(2018年5月)では加えて韓国政府に合意の実施を強く求める新「河野談話」とでも言うべき「河野外務大臣談話」が新たに書き込まれました。 ■「慰安婦」支援団体は日本政府を非難 元「慰安婦」被害者を支援する市民女性団体は3月9日、ソウルで第15回アジア連帯会議を開催し、「慰安婦」強制と「慰安婦」制度が「性奴隷制」であることを否定する日本政府を非難する決議を採択しました。連帯会議は、日本政府の立場は「被害者の証言と歴史的事実」を否定することに他ならないとし、日本政府に「慰安婦」制度という日本軍性的奴隷制による犯罪事実を認定し、被害者に改めて公的な謝罪と法的賠償を求めるなどの6項目を日本政府に要求しました。 ■日本政府はかつて「強制性」を認識していた 「河野官房長官談話」(1993年8月)が発表された当時、日本政府は「慰安婦」募集に関して「強制性」が存在したことを認めていました。内閣外政審議室が作成した想定問答(1993年8月4日)では「いわゆる従軍慰安婦が、前述のように本人の意思に反して集められたことを『強制性』と定義づけるのであれば、いわゆる従軍慰安婦の募集にあたり『強制性』が存在したケースも数多くあったことを政府として認めたと理解していただいてよい」としていたからです。このような見解を示していた日本政府でしたが、「外交青書2018」の<慰安婦問題の取組>に「河野官房長官談話」は触れられずじまいでした。 ■支離滅裂な日本政府の「慰安婦」認識 日本政府が元「慰安婦」被害者にいくら「心からおわび」を表明しても、「強制した事実がない」という認識であるかぎり、被害者に理解してはもらえません。このような支離滅裂な日本政府の「慰安婦」認識は国際社会の認識と相当乖離があると言えます。「河野官房長官談話」が発表される一か月前の1993年7月、国連の差別防止等小委員会特別報告者のファン・ボーベンは戦時強制売春を取り上げて真相究明の意義を強調していました。当時のファン・ボーベン国連最終報告は現在でも有効であることを日本政府は真摯に認めなくてはなりません。 Contents NO.173 支離滅裂な政府の「慰安婦」認識/第15回アジア連帯会議決議/外交青書2018/戦後73年の憲法状況 西川重則/自由民主党の基本方針など/「慰安婦」思想の源流 川村一之/軍慰安婦研究所の発足/マニラの「慰安婦」被害者像/731部隊「留守名簿」/「産業革命遺産」と強制労働」in長崎 |
市民会議ニュース 2018.3.1 NO.172(2018.3.17更新) |
日韓「慰安婦」合意 韓国政府が「合意」検証結果と新対応を発表 10億円拠出の裏で3項目の秘密合意 〜「挺対協」説得・海外「碑」不支援・「性奴隷」不使用 〜 韓国政府の日韓「慰安婦」合意に関する検証結果の報告書が2017年12月27日に公表された。報告書は、「(日本政府の)『法的』責任や責任認定という言葉は引き出せず、韓国側は被害者訪問などを求めたが、合意に盛り込めなかった」とし、日本政府の謝罪に対しても「韓国側は不可逆的な『閣議決定』の謝罪を要求したが、実現しなかった」と結論づけた。そして何よりも「被害者らが受け入れない限り『最終的かつ不可逆的な解決』を宣言したとしても、再燃するしかない」とし、日本政府の対応よりも朴前大統領の対応を批判するものとなった。 ■検証で明らかになったこと 韓国の朴前政権は「慰安婦」問題で、日本に法的責任と公式謝罪、政府予算による賠償の3点に亘って要求していたが、日本政府が「責任を痛感する」と譲歩したことで道義的責任から進展したと評価。10億円の拠出金も国予算の支出となったことで以前の「アジア女性基金」から前進したとして妥結を急いだ。しかし「慰安婦」強制の文言は盛られなかった。 今回の検証では公開された情報だけでなく、日本政府が韓国政府に要求した「慰安婦」支援団体の韓国挺対協を説得すること、海外(第三国)での「慰安婦」追悼碑設置を支援しないこと、「性奴隷」という表現は用いないことの3項目を韓国側が容認し、非公表としていたことが明らかになった。このことは日韓合意の内容を被害者と挺対協に説明しても納得が得られないと朴前政権が判断したことを示している。 ■検証で明らかにならなかったこと 日韓「慰安婦」合意交渉で米国政府の関与があったことは周知の事実であるにも関わらず、検証報告書では簡単な記述に終わっている。合意当日、当時のケリー米国務長官は日韓両国が「慰安婦」問題の最終解決で合意したことを歓迎する声明を出し、ライス大統領補佐官も「合意とその完全な履行を支持する」と表明した。米政権は南シナ海に進出する中国や北朝鮮の核問題に対応するため日米韓3カ国の安保協力が不可欠で、日韓で対立していた「慰安婦」問題の解決は優先課題だった。 日本側は米国に「韓国はゴールポストを動かす」と「慰安婦」交渉の難しさを主張、米国は韓国側に「謝罪、責任認定の部分で進展があれば日本が望む最終的解決であることを確認してもよいのではないか」と伝えたとされる(中央日報2017/1/12)。「最終的」は日本側が提案していたが、韓国側は「謝罪」を後戻りさせないために「不可逆的」という表現にこだわった。合意は「最終的かつ不可逆的に解決」となり、「謝罪」ではなく「解決」の不可逆性を示す結果になった。日本は第三者の米政府による声明で最終解決の担保とする案を検討していた(日経新聞2015/12/27)のであり、検証報告書で米国の関与に触れていないのは米政権への配慮としか言いようがない。 ■韓国政府の新たな対応 検証結果を踏まえての韓国政府の新たな対応は一言でいって「慰安婦合意は破棄も履行もしない」というものだった。康京和長官は日本と再交渉はしないと明言、日本に自発的な真の謝罪を促した。文在寅大統領も「日本が真実を認め、被害者に真の謝罪を」することが「慰安婦問題の解決だと思う」と述べたが、安倍政権は「合意の変更は断じて受け入れない」と反応した。日韓合意は公式文書もなく「河野談話」を確認しなかったことで韓国政府を縛るものとなり、国連の場で日本の「『性奴隷』は事実に反する」という反論を招く結果になった。しかし慰安婦問題が反人道的行為であることは、1996年の国連報告書(クマラスワミ報告書)で最初に慰安婦を「戦時性的奴隷」と規定し、日本政府に謝罪と賠償を勧告したように、国際社会の認識に変わりはない。 Contents NO.172 「慰安婦」合意に裏取引/第196通常国会に国会要請/「明治150年」−繰り返す「挙国一致」イベント 川村一之/「日韓合意」は解決ではない/【資料】日韓「慰安婦」合意の検証と新対応/『明治日本の産業革命遺産』と強制労働/第11回強制動員研究集会/第15回「慰安婦」問題アジア連帯会議 |
第196通常国会で全国会議員に要請 2018年1月22日 (2018.1.27更新) |
第196回通常国会が召集された1月22日、私たちは北東アジアの緊張が増している今日、国会は日本国憲法が明記する平和的生存権を尊重するよう衆参両議院の全国会議員に要請しました。 【要請文】 国会議員の皆さまへ 2018年1月22日 「国難」克服より「和平」を! 〜 平和的生存権の尊重を 〜 戦後73年を迎えた第196回国会(常会)の開会にあたり、「正当に選挙された国会における代表者」(日本国憲法前文)の皆様に訴えます。私たち主権者は北東アジアの緊張が増している今日、日本国憲法の前文を想起し、「政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうに」願っています。国会議員の皆様にあっては日本国憲法第99条を尊重され、平和憲法にふさわしいお働きをされることを望んでおります。 ■「明治維新150年」の教訓とは 安倍晋三総理は年頭所感で、2018年は明治維新から150年の節目にあたるとし、先人たちは植民地支配がアジアに押し寄せるという「国難」に対し、近代化を一気に推し進めて独立を守り抜き、危機を克服したと明治維新の意義を説きました。 しかし歴史の事実はそのような理解だけでは説明がつかないことを教えてくれています。 明治政府は維新から5年後の1872年、琉球王国を琉球藩とする琉球処分を実施、1879年には琉球藩を沖縄県とすることによって琉球王国を滅亡させています。また維新から6年後の1874年、明治政府は台湾に初の海外出兵を行い、台湾原住民を殺害するとともに清国から50万両の賠償を獲得しました。更に翌年の1875年、明治政府は欧米列強にならって朝鮮政府に開国を迫り、日本の軍艦を江華島に派遣、乗組員が上陸して朝鮮側の住民を殺害した江華島事件を引き起こしました。このように「明治維新150年」の教訓とは日本によるアジアへの対外侵略と植民地支配に道を開いたという理解も必要なのではないでしょうか。 その後の歴史はいうまでもなく、アジア太平洋戦争による敗戦と戦争放棄の日本国憲法の制定へとつながっています。日本国憲法はその前文に「われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する」と述べ、自国民だけでなく世界の人々も同等に平和的生存権を有することを明確にしています。 国会議員の皆様におかれては、先人の過ちと反省を学び、不戦の決意を示していただきたいと切にお願いする次第です。 ■「恒久平和調査局」を国会図書館に 今年は国立国会図書館が開館して70年を迎えます。国立国会図書館法は前文で「憲法の誓約する日本の民主化と世界平和とに寄与することを使命として、ここに設立される」と謳っています。国会議員の皆様におかれては、国立国会図書館の使命を再認識し、かつての戦争被害を公的に調査する恒久平和調査局を国会図書館に設置して世界平和に寄与されるよう要望いたします。
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